2025/08/21

【完全ガイド】夏着物とは？種類・素材・選び方・お手入れまで徹底解説〈前編〉

はじめに｜夏に着物は暑くない？を解決する“夏着物”の魅力

蒸し暑い夏の日差しの中でも、凛とした美しさを放つ夏着物には、見る人にも着る人にも涼やかな印象を与える特別な魅力があります。薄手の生地や透け感が生む優雅な風合いは、日本の伝統美を感じさせながら、快適な着心地も叶えてくれます。

しかしながら、「夏に着物って暑くないの？」「浴衣と夏着物の違いは？」といった疑問を持つ方も多いでしょう。

本記事では、そんな疑問に寄り添いながら、「夏着物とは何か」という基本から、「種類・素材・選び方・お手入れ方法」までを徹底的に解説します。

夏着物とは、主に6月から9月ごろに着用される涼感のある着物の総称です。特に絽（ろ）や紗（しゃ）、麻（あさ）など、通気性の良い素材が使われています。

近年の温暖化により、5月下旬〜10月初旬まで着用する方も増えており、「いつから夏着物を着るか」という問いには、気候や体感温度に応じて柔軟に対応するのがポイントです。

・単衣（ひとえ）：裏地のない一枚仕立ての着物。6月と9月に着用されることが多い。
・薄物（うすもの）：透け感のある素材で盛夏（7月・8月）向け。絽や紗が代表的。

暑さの感じ方は人それぞれなので、最高気温が25℃を超える頃を目安に、単衣→絽・紗へと段階的に切り替えるのがおすすめです。

絽は、経糸を絡ませて横方向に透かし（絽目）をつくる織物で、見た目の涼感とフォーマル感を兼ね備えた夏着物の定番です。

紗は絽よりも目が粗く、さらなる透け感と軽さが特徴の織物。通気性が高く、盛夏にも快適ですが、織りの難易度が高いため高級着物として位置づけられます。

麻は吸湿性・速乾性に優れた天然素材。シワになりやすいですが、それも「味わい」として親しまれ、普段着に人気です。

・楊柳（ようりゅう）：縦にシワが入った織物。肌離れが良く快適。
・縮（ちぢみ）：強撚糸で織られた、シボのある生地。さらりとした感触。

素材選びは、「快適さ」と「手入れのしやすさ」がポイントです。

特別な日には正絹、普段使いには麻やポリエステルを使い分けると、より夏着物を楽しめます。

素材	お手入れ方法
正絹（絽・紗）	着物専門クリーニングが基本。汗をかいたらタオルで吸い取り、陰干ししてから保管
麻	洗濯表示を確認し、中性洗剤で手洗いまたはおしゃれ着コースで。陰干しとアイロン必須
ポリエステル	ネットに入れて弱水流で洗濯可。干す際にシワを伸ばし、アイロンは低温で当て布を使用