着物好きの人の中には「着物を着たいけど着る機会がない」「着付けができるようになったけど、着る機会がしばらくなく忘れてしまった」という人も多いかと思います。
こうした悩みを抱える人におすすめできるのが香道です。
香道は、茶道と華道に並ぶ日本の三大芸道の1つです。香りを「聞く」と表現し、香りをじっくりと味わい心で聞き取る=鑑賞することを「聞香(もんこう)」といいます。
香りにはリラックス効果があるので、静寂な空間で自然の香りを鑑賞する時間は、日々の喧騒やわずらわしさから解放され癒される特別なひとときとなります。
また、現代ではお稽古事としても楽しまれています。香道のお稽古では服装規定は基本的に設けられておらず、カジュアルな装いで気軽に参加できるものも多いです。着物とも相性抜群なので、着物姿の講師は多く、受講生の中にも着物で参加される人はめずらしくありません。
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本記事では、着物を着る機会や楽しみを増やしていくことにも繋がる香道の歴史や魅力についてご紹介します。
香道の歴史
日本で香りが使われはじめたのは奈良時代といわれています。当時、香りは仏教とともに国内に伝えられ、東大寺などの大寺院で瞑想効果を高めるために使われていました。香りには集中力をうながす力があるためです。
香道と聞いてまずイメージされるのは紫式部や藤原道長がいた平安時代です。この時代になると香りは寺院だけではなく、貴族たちの間で日常生活の中で用いられるようになりました。平安貴族たちは室内で香りを焚き和歌を詠むなどの薫物合(たきものあわせ)を楽しんだそうです。
香道が体系化されたのは室町時代になってからです。銀閣寺を建設したことで有名な8代目将軍足利義政は、香りを好んでいたことでも名を知られています。彼は現存する最も古い香座敷を銀閣寺内に建設しています。
また、織田信長や徳川家康といった戦国武将たちも香木に興味をもっていたそうです。
こういった歴史的背景があり、現代の日本でも香道は国を代表する伝統芸道として重んじられ、一般の人たちにも門戸が大きく開かれることとなりました。
使われる香りについて
香りはすべて自然のもので、香木を使います。香木は国内では産出されないインドや南方諸地方の特産品がほとんどで、樹木の心材部分からよい香りがします。
香道で主に使用されるのが沈香(じんこう)と白檀(びゃくだん)です。
沈香は東南アジアに生息する木で特にベトナム産のものは最高級品として知られています。濃い茶色をしており、甘く、スパイシーで重厚な香りが特徴です。白檀はインド産のものが特に高級とされており、薄めの茶色で軽やかで甘い香りが特徴で、お香や扇子などに古くから用いられているため、その香りに馴染み深さを感じる人も多くいます。
分類上は同じであっても、まったく同じものはなく、唯一無二の香りを楽しむことができます。甘めの香りが多く、嗅いでいると心地よさを感じられます。
さらに「六国五味(りっこくごみ)」と呼ばれる種類分けがされており、「六国(りっこく)」では産地別で6種類に、「五味(ごみ)」では香りの感じ方別で5種類に分けられています。
ゲーム感覚で楽しめる貴族の遊び
香道には、「組香(くみこう)」という遊びがあります。 これは香りを当て合うゲームのようなもので、複数人で楽しむことができます。
四季や名所の風情を感じさせる『源氏物語』を主題にした源氏香などは有名です。これは5つの香りを聞き分け、その順序や組み合わせを当てる遊びです。そこで用いられる図案は『源氏物語』の54巻のうち「桐壺」と「夢浮橋」を除いた52種あり、それぞれに各巻の名が付けられています。
組香は勝敗を決めることを目的に行うというよりも、参加者が一期一会の香りを鑑賞しながら感性や知識、教養を試すものとして楽しむことが重要視されています。
こういった香道の遊びに参加することで日本文化の豊かさと美を堪能することができます。
大人の女性としての気品を高める
和の芸道に親しんでいる女性はとても魅力的です。伝統的な文化に触れることができるのはもちろんですが、習字や和歌の知識があるとより楽しめるため、香道をきっかけに趣味の幅を広げていくこともできます。
さらに近年は、世界各国から日本に注目が集まっています。訪日客の中には日本文化に心惹かれ、それらの体験を希望する人も多くいます。今後、香道を含む日本の伝統芸道は国際的にもっと認知され、さらに評価されると考えられます。
また、香道のお稽古には日本文化や着物が好きな人も多く、自分と似たような趣味をもつ人に出会えることもあり、職場の同僚でも家族でもない人とかかわる時間を作るきっかけになるかもしれません。
香道を体験できる場所
香道は特殊なお稽古だからと、ハードルが高いように思われるかもしれませんが、意外と気軽に体験することができます。手始めとして初心者におすすめなのが、1回で体験ができるカルチャーセンターでの講座です。
センターやプランによって開催日数や料金などは異なるものの、受講料、教材費込みで約15,000円で3回程度のカリキュラムに参加できるといった内容が多いようです。また、単発のお稽古を参加費3000~5000円で開催しているセンターもあります。
全国にあるお香の専門店の中にも香道の体験講座を開催している店舗があります。1カ月に1回の実施やレベル別での開催など内容も様々で、料金は1回5000円~10000円前後になります。
参加時の服装は地域や開催場所によりますが、せっかくなので着物姿での参加もおすすめです。
源氏香文様の着物や帯をお持ちであれば、きっと最高の着る機会になるはずです。
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▼参考資料
谷川ちぐさ『香道を楽しむための 組香入門』淡交社 2012年
三條西堯水『よくわかる香道歴史から作法まで香りの世界を深める』メイツ出版 2022年
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▼プロフィール
執筆者:りさ
日本文化に興味があります。大学では日本の伝統文化や芸術を学んでいました。
着付けや香道を趣味として楽しんでいます。