化学繊維でありながら、絹のような光沢感と着心地を叶える『シルック®きもの』。訪問着や付下げ、色無地、小紋などフォーマル向け・カジュアル向け問わず豊富な種類を展開しており、絹より扱いやすいため、茶道のお稽古着や雨の日用としても着物好きの方々の間で愛用されてます。
今回はそんな便利で画期的な『シルック®きもの』の魅力について深掘りします。
東レの『シルック®きもの』とは?
国内の合成繊維メーカーである東レ株式会社が独自に開発した繊維「シルック®」。シルクのように見えることから「Slik+Look」を略して名づけられました。
『シルック®きもの』は、この「シルック®」を使って作られた着物。絹に劣らない見た目と着心地から、最高級ポリエステル着物としてフォーマルシーンからカジュアルシーンまで幅広く活用されています。
東レの『シルック®きもの』の特長
お手入れ・保管がしやすい
着物の定番素材である正絹は水に弱く、シミや縮みの原因になるため自宅での洗濯は不可。洗いたい時は、着物専門のクリーニング業者に依頼しなければなりません。
一方の『シルック®きもの』は、水に強くシワにもなりにくいので家庭用の洗濯機で洗うことができるので、お手入れも楽ちんです。
さらに、耐湿性にも優れているので、収納の際も正絹のような湿気対策は不要。わざわざ桐箪笥など着物専用の収納道具を用意しなくても、洋服と同じような環境で保管できます。
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絹と比べても遜色のない風合い
『シルック®きもの』は、繊維の断面を絹と同じような多角形にすることで、絹ならではの風合いを見事に再現しているのが特長。
上品な光沢感や体のラインになめらかになじむフィット感、凛とした着姿を叶える優美なドレープ感といった正絹と遜色のない風合いが感じられ、通常のポリエステルに見られるような化繊特有のテカリや発色も目立ちません。
さらに見逃せないのが、柄付けへのこだわり。一部機械による捺染も行われていますが、ほとんどの着物が京都の職人によって丁寧に染色されています。ミリグラム単位で染料の配合データを取り、色に違いが出ないよう徹底管理。染料と素材が違うだけで正絹の着物と同じ工程で作業されており、ポリエステルでありながら手作業のぬくもりと味わいが楽しめます。
快適な着心地
絹のようにしなやかでしっとりとした着心地も、『シルック®きもの』の魅力のひとつ。適度なとろみがあり、まるで肌に吸いつくようななめらかさを体感できます。
ポリエステルの着物というと静電気を心配される方もいますが、『シルック®きもの』にはすべてシルラック®加工と呼ばれる特殊な加工が施されています。これには静電気を防止する効果が備わっており、洗濯をしても失われません。もし効果の低下を感じた場合は、アイロンをかけることで復元するので、快適な着心地が長続きします。
正絹よりも手ごろな価格で購入できる
正絹の着物を購入する場合は、安くても10万円前後になることが多いですが、『シルック®きもの』は5万円前後で購入することが可能。仕立て代を入れても10万円以内で正絹に劣らない着物が手に入ると考えると、かなりお得です。
また、数は多くないものの、プレタ品がある点もメリット。仕立て代がいらないため、よりリーズナブルに手に入れることができます。
『シルック®きもの』はこんな方におすすめ!
正絹とポリエステルのいいとこどりをしたハイブリッドな使い心地が魅力の『シルック®きもの』。どんな方にも使い勝手の良い着物ですが、その中でも次のような方には特におすすめ。当てはまる方はぜひこの機会に手に入れてみてはいかがでしょうか?
着物に着慣れていない初心者の方
正絹の着物に憧れはあるけれど、金額やお手入れの面でハードルが高く感じてしまう着物初心者の方は、『シルック®きもの』から始めてみるのも一つの手。
自分サイズに仕立てても正絹よりも手ごろな値段で購入できる上、万が一食べ物や飲み物をこぼしてしまった時でも落としやすく、わざわざ着物ならではの特別なケアをする必要がないため、初めての1枚にもぴったりです。
仕事で着物を着る方
『シルック®きもの』は、水に触れたり汚れたりしても簡単にお手入れできるため、小料理屋や料亭、クラブ、スナックなど、飲食店での仕事着としても最適
実用性はもちろん、色無地や訪問着、小紋など色柄の種類が豊富なので、着物ならではの華やかさをしっかり演出できます。
子供の行事で着物を着たいママ
お宮参りや七五三、入卒園式など、子供の成長や新たな門出を祝うハレの日に着物を着たいと思っても、小さなお子さんと一緒だと汚れてしまう不安があります。
『シルック®きもの』であればそんな心配は御無用。しかも、安価なポリエステル着物だとセミフォーマルな場では貧相に見えてしまう場合がありますが、『シルック®きもの』はシルクと遜色のない高級感があるため見劣りしません。
雨の日でも着物でオシャレを楽しみたい方
正絹の着物は水に弱いので、雨の日に着るのはハードルが高め。一方の『シルック®きもの』は、繊維表面に強力な防汚加工が施されているので、雨や泥跳ねによる汚れを気にせず着用することができます。
また、油も弾くので、汗ばむような暑い日にもぴったりです。
東レのシルジェリーとの違いとは?
『シルック®きもの』の姉妹品に、『シルジェリー』という素材で作られた着物があります。シルジェリーとはシルックの廉価版で、絹のような着心地や風合い、家庭用洗濯機で丸洗いできるという高い品質と利便性は同じです。
違いはというと、シルックの方が「水はけがよく型崩れしにくい」「生地の風合いがより正絹に近い」という程度なので、シルジェリーでも大きな不便はありません。
また、シルックより比較的プレタ品も多く、より手軽に手に入れられるので、気に入ったものがあればシルジェリーから試してみるのもよいでしょう。
『シルック®きもの』の購入方法は?
『シルック®きもの』は、呉服店やネットショップで販売されています。
一部プレタ品もありますが、反物で売られていることがほとんどです。反物は別途仕立て代がかかるものの、自分サイズに誂えられるので着付けがしやすく、着崩れも起こりにくいというメリットがあります。
自分のサイズが分からないという方は、呉服店などに行けば店頭で測ってもらうことができます。また、公式サイトなどで身長やヒップから算出したサイズ表を展開しているショップも多いので、オンラインで購入したい方はこちらを参考にするのもおすすめです。
<サイズ表例>
プレタ品の場合はS・M・Lなどのサイズ展開になっており、洋服感覚で選ぶことができます。ただし、ブランドやメーカーによってサイズ感が異なるので、購入前にしっかり確認しておきましょう。
『シルック®きもの』で気軽にワンランク上のオシャレを楽しもう
「正絹の着物は高価で手が届かないけれど、通常のポリエステルよりは上質感のあるものが欲しい」「正絹の着物を着たいけれど、お手入れが面倒…」。
『シルック®きもの』は、そんな方にこそぜひ試していただきたい着物です。
着物初心者・上級者問わずワードローブに1枚加えておくだけで、着物の楽しみ方がさらに広がるはず。
また、「シルック®」はその利便性の高さから、着物だけでなく羽織や長襦袢、半衿にも使われているので、気になった方はぜひあわせてチェックしてみてください。
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▼プロフィール
執筆者:さない ちえ
カジュアル着物愛好家 &フリーランスライター。着物ムック本の編集・ライターやリサイクル着物店の店長などを経験。「着物をもっとオシャレにもっとカジュアルに楽しもう」をテーマに、普段着としての着物を楽しむアイディアや日常をSNS等で発信する傍ら、WEB媒体を中心に着物・日本文化関連のコンテンツ制作も行っています。
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